入試小論文で求められる基本的な能力には、1.読解能力 2.思考能力 3伝達能力の3つの要素があると言えます。それぞれどのようなものでしょうか。
1 読解能力は、設問分析に基づいて課題文や課題資料を的確に読み取る能力を指します。ということは、設問文を正確に理解するという読みがアプローチの最初の段階で要求されることになりますし、設問文の条件に即した課題文の読み込みができる能力が要求されるということなのです。
この能力は国語の読解とは異なり、要点を自分の視点から読み込む必要があるということでもあります。したがって、国語の問題のような「資料の部分解釈」や「指示語の内容把握」などの果てに行き着くことのできる深い読み込みという点
では、真の読解能力が要求されると言うこともできるでしょう。
2 思考能力とは、現実を踏まえながら、設問の要求に応じるために自問自答を論理的に展開していく能力を指します。もちろん、設問の読みや課題資料の読みの段階でも考える能力は要求されますが、もっとも論文試験の重要な特徴とされるポイントは、課せられたテーマについて、設問文の要求にしたがってどこまで現実的に、深く考えることができるか
という点ですから、この点を満足することが出来なければ決して高い評価を得ることは出来ません。
たとえば「環境問題の解決策についての意見論述」を求められているときに「環境問題にどのようなものがあるか」をいくら詳説できても、また解決策を列挙するだけでも評価は得られないのです。考えて導かれる答えは千差万別で、正解は無数にあるといっても過言ではありません。その点でどこかにある正解を覚えておいて解答しようとしても決してよい
解答にはなりません。
3 伝達能力は、考えた内容を結論に向けて読み手(採点者)に納得してもらえるように適切にかつ分かりやすく表現する能力を指します。論文の作成は、文章表現能力で何とかなると言われることがありますが、実は、このときの「文章表現能力」には先の考える能力が含まれるということを無視してはなりません。
課せられたテーマについて考えることなくして要求されている論述を行うことはあり得ないからです。そこで、ここで特に伝達能力と呼ぶのは、考えたことを的確に客観表現に置換して理解しやすいようにまとめる能力を指すと言えるでしょう。
3つの能力は従来の基礎教科の試験では十分に調べることが出来ませんでした。読む能力は国語の試験で必要となる読解能力とは根本的に違いますし、考える能力といっても数学のように正解がどこかに用意されていることはありません。
そして、表現能力といっても美辞麗句を並べたり専門用語をたくさん知っていたとしても、自分の考えや意見を読み手に分かるように適切にまとめていかなければなりません。 これらは、従来の学科試験では検査し難かった能力(「生きる能力」と呼ぶ二とも「学問の基本能力」と呼ぶこともできる能力)を指しています。
小論文という試験方法が盛んに導入されるようになったのは、これらの能力を検査することに適した試験だったからなのです。